《私の本棚 第348》 令和7年6月10日 号 聊斎志異より 「王六郎」 蒲松齢 作?著? |
淄川に住んで漁師をする許という男がいました。彼は毎晩酒を持って河へ行き、飲みながら漁をしていました。心根の優しいこの男はいつも河に酒を注ぎ、溺れ死んだ人達に捧げていました。ある夜も同じ様にして漁をしていましたが、その夜に限って一匹の魚も捕れません。そんなとき自分の周りを何か用事が有るかのように青年がウロウロします。君も飲めよと勧めると喜んで一緒に飲みました。許は、今日に限って魚が捕れないと言うと、六郎という青年は
「川下から追ってあげます」 と言って手伝ってくれ、思い掛けない豊漁になったのです。 毎日一杯の酒を酌み交わしながら半年ほど経ったとき彼は突然 「もうじきお別れになります」 と言います。どうしてなのか尋ねると、自分は数年前に酒に酔ってこの河で溺れ死んだ幽霊だと話してくれました。それで自分の業が消えて生まれ変わることになったので、これからはもう会えないといいます。しかし僕の代わりになる人が来ますからと言うのです。明日昼頃ここでおぼれ死ぬ女性がいますから、其の人が僕の代わりになりますと。漁師は不思議な話とは思いますが、自分の目で確認したいと思って河にきました。しばらくすると赤ん坊を抱いた女がやってきて河べりで足を滑らせて落ちました。女はその赤ん坊を岸へ投げ上げた後おぼれ死ぬかと見えましたが、幸運にも這い上がってきました。そして暫く休憩をしてから子供を抱いて去って行ったのです。 この事故のとき許は助けようと思ったのですが、助けてしまうと六郎が生まれ変われないからどうしようと一瞬迷っていました。 夜になってから許はいつものように漁にでました。すると六郎がでてきて、昼の事故が違う結果になったのは母と子の二人の命と引き替えに生まれ変わるのは嫌だから僕が助けたのですと言います。それで又何日か以前と同じ様に六郎と飲みながら漁をしていますと、彼は 「僕の思いが帝天に通じて神になった」 といいます。その神(六郎)が天に誘ってくれたので彼の言いなりに行くと、土地の人々は許の名前や住んでいる所などを神から聞いて知っており大歓迎を受けました。戻ってから生活は少し楽になって漁はしなくても良くなったといいます。 善行は小さくても報いが有るという話しです。 |
![]() 鳥取河原城からの眺め 手前・八東川と千代川が 合流し出合橋へ そこから千代川 鳥取自動車道 |
![]() 宇治平等院 塔ノ島 宇治川 大吉山展望台から |
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